トラブル防止に役立つ遺言書

スポンサーリンク
平成27年度における裁判所の司法統計では8,181件の遺産分割事件(認容・調停の成立件数)がありました。このうちの75.8%にあたる6,205件は遺産価額が5,000万円以下の事件となっています。もはや他人事とはいえない遺産相続問題ですが、遺産の分割で親族同士が揉めてしまうことは何としても避けたいところ。こんな時に役立つのが遺言書です。

遺言書の効果

遺言書がないまま相続が発生した場合、民法にしたがった法定相続となります。法定相続では相続人全員による遺産分割協議によって相続財産を分割することになりますが、遺産分割協議がまとまらない場合は遺産分割調停や遺産分割審判といった裁判手続きをとらざるおえません。こうなっては親族間で遺恨を残すことにもなりかねません。しかし、遺言書があれば遺産分割協議の必要はなく、被相続人の想いを相続に反映することができます。たとえば、老後の世話をしてくれた子供や事業の後を継いでくれた子供により多くの財産を残したり、相続人以外の世話になった方に財産を譲ったり、社会や公共のために財産を寄付したり、遺言書がないとなかなか実現できないこともあります。

遺言書の書き方

遺言書には普通方式の遺言書と特別方式の遺言書があります。特別方式の遺言書は死期が迫っていて自ら署名や押印ができない場合など、普通方式によって遺言をすることができない場合にのみ有効です。通常であれば普通方式の遺言書が用いられますが、普通方式の遺言書には下記の通り3つの書き方があります。

自筆証書遺言

遺言書を作成した日付、遺言者の氏名、遺言書の内容、すべて自筆して押印する必要があります。遺言書を書きたいと思ったときに、誰にも知られず手軽に書くことができますが、書き方に不備があると遺言書が無効になることがあります。また、遺言書は自分自身で保管する必要があるため、遺言書を紛失したり、偽造や変造される危険性もあります。

公正証書遺言

公証役場で2人以上の証人が立ち会いのもと作成される遺言書です。遺言者が口述した遺言の内容を公証人が筆記することで遺言書を作成しますので、書き方の不備で遺言書が無効になることはほとんどありません。遺言書の保管も公証役場で行ないますので遺言書の紛失や偽造・変造の危険性もありません。相続が発生した際、公正証書遺言は家庭裁判所による検認の必要がなく、ほぼ確実に遺言書の効果を発揮することができます。ただし、遺産価額と相続人の人数に応じて公正証書遺言の作成費用が発生します。

秘密証書遺言

遺言者が自筆またはパソコン(代筆も可)で作成した遺言書を封筒に入れて、公証役場で遺言書の存在のみを証明してもらうものです。公証役場での証明には証人2人以上の立ち会いが必要となります。遺言書の内容を誰にも知られずに済む一方、書き方に不備があると遺言書が無効になる場合があります。また、遺言書を自分自身で保管する必要があるため、遺言書を紛失する可能性があります。秘密証書遺言も公証役場での作成費用が発生します。

遺言信託の活用も視野に

信託銀行や信託専門会社では「遺言信託」といった名称のサービスを提供しています。このサービスでは遺言書の内容に関するアドバイスや遺言書作成時におけるサポート、遺言書の保管と管理はもとより、相続発生時には相続人に遺言書を開示し、相続財産を調査して財産目録を作成します。そのうえで遺言執行者として遺言の内容にしたがった相続財産の処分や名義変更、引き渡しなどによって相続人や受遺者に財産の分配を行ないます。遺言書の開示から相続財産の分配までの過程においては親族間でトラブルになるケースも多く、信託銀行や信託専門会社など専門知識を有する第三者が中立的な立場で関与する方が良い場合もあります。
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする