低金利時代における生命保険の活用法

スポンサーリンク
2017年4月、日銀のマイナス金利政策による長期金利の低下を反映して、金融庁は標準利率を1.0%から0.25%に引き下げました。この影響で各生命保険会社における予定利率も引き下げとなり、生命保険商品の利回りが低下しました。この過去に類を見ない低金利時代において生命保険をどのように活用していくか考えてみたいと思います。

生命保険に加入する目的

生命保険は被保険者が死亡または高度障害となった場合に保険金を受け取ることができるものです。なお、高度障害とは概ね下記を指します。
  • 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  • 言語またはそしゃく機能を全く永久に失ったもの
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
  • 両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
つまり、死亡または高度障害によって被保険者の経済活動が喪失または困難となった場合に死亡保険金受取人(高度障害の場合は被保険者本人)に対して保険金が支払われるものを生命保険といいます。言い換えると死亡または高度障害によって経済活動が喪失または困難となった場合の保障を確保するために生命保険へ加入するわけですが、具体的には遺された家族の生活費や教育費の保障、住宅ローン等借金の返済、家族に葬式費用の負担をさせたくないなどの目的で生命保険に加入します。また、貯蓄を主な目的として生命保険に加入するケースもあります。

生命保険における3つの基本型

生命保険はむずかしいとよく言われます。いろいろな種類のプランがあって、とても複雑そうに見えます。でも実は、生命保険は3つの基本型のうちのひとつ、またはふたつの組み合わせで成り立っていることがほとんどです。以下にその3つの基本型を紹介します。

定期保険

いわゆる掛け捨ての生命保険です。銀行の定期預金などと混同してお金が貯まる気がしてしまいますが掛け捨てなので気を付けましょう。子供が大学を卒業して社会人になるまでとか、自分が定年退職を迎えて働けなくなるまでとか、ある一定期間に必要な保障をなるべく少ない保険料で準備したい場合に定期保険が向いています。
定期保険の加入例(30歳男性の場合)
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険期間:60歳まで
  • 支払期間:60歳まで
  • 保険料:3,840円/月
  • 60歳までの支払保険料累計:1,382,400円
  • 60歳時に受け取れる満期金:0円
上記の加入例ですと、毎月の保険料3,840円で死亡や高度障害が発生した場合の保障1,000万円を準備することができます。ただし、60歳までに死亡や高度障害がなかった場合には、それまでに支払った1,382,400円が掛け捨てとなります。

養老保険

保障と貯蓄を両立した生命保険ですが、主に貯蓄を目的として加入するケースがほとんどです。子供の教育資金の準備や老後の生活資金の準備など、ある期日までに一定の金額を貯蓄したいといった場合に養老保険が向いています。
養老保険の加入例(30歳男性の場合)
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険期間:60歳まで
  • 支払期間:60歳まで
  • 保険料:33,240円/月
  • 60歳までの支払保険料累計:11,966,400円
  • 60歳時に受け取れる満期金:1,000万円(83.6%)
上記の加入例ですと、毎月の保険料33,240円で死亡や高度障害が発生した場合の保障1,000万円を準備しながら、60歳で満期を迎えた場合にも1,000万円を受け取ることができます。つまり、60歳までに必ず1,000万円を受け取ることができます。ただし、2017年4月の予定利率引き下げにより、60歳までの支払保険料累計が1,000万円を大幅に上回る現象が起きています。そこで予定利率引き下げの影響をほとんど受けていない米ドル建ての養老保険も見てみましょう。
米ドル建て養老保険の加入例(30歳男性の場合)
  • 保険金額:100,000米ドル
  • 保険期間:60歳まで
  • 支払期間:60歳まで
  • 保険料:225.60米ドル/月
  • 60歳までの支払保険料累計:81,216.00米ドル
  • 60歳時に受け取れる満期金:100,000米ドル(123.1%)
上記のとおり、米ドル建て養老保険であれば60歳までの支払保険料累計が81,216.00米ドルに対して60歳時に受け取れる満期金が100,000米ドルとなりますので保障と貯蓄を両立できることがわかります。

終身保険

終身保険も保障と貯蓄を両立した生命保険ですが、養老保険との違いは満期がないことです。死亡や高度障害が発生した場合に保険金として受け取るか、任意の期日に解約して解約返戻金(積立金)として受け取るか、必要に応じて選択することができます。家族の生活を保障するだけでなく、子供の教育資金や老後の生活資金の準備、お葬式代の準備や相続対策など、終身保険は色々な用途で活用することができます。
終身保険の加入例(30歳男性の場合)
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険期間:終身
  • 支払期間:60歳まで
  • 保険料:29,660円/月
  • 60歳までの支払保険料累計:10,677,600円
  • 60歳時に受け取れる解約返戻金:914.0万円(85.6%)
  • 70歳時に受け取れる解約返戻金:943.2万円(88.3%)
上記の加入例ですと、毎月の保険料29,660円を60歳まで支払うことで死亡や高度障害が発生した場合の保障1,000万円を準備することができます。しかも、この保障は一生涯続きます。ただし、養老保険と同様に60歳までの支払保険料累計が1,000万円を上回る現象が起きていますので、米ドル建ての終身保険も検証してみましょう。
米ドル建て終身保険の加入例(30歳男性の場合)
  • 保険金額:100,000米ドル
  • 保険期間:終身
  • 支払期間:60歳まで
  • 保険料:134.70米ドル/月
  • 60歳までの支払保険料累計:48,492.00米ドル
  • 60歳時に受け取れる解約返戻金:53,029.60米ドル(109.3%)
  • 70歳時に受け取れる解約返戻金:69,516.37米ドル(143.3%)
上記のとおり、米ドル建て終身保険であれば60歳までの支払保険料累計が48,492.00米ドルに対して保険金額が100,000米ドルであるため、死亡や高度障害が発生した場合は支払った保険料の2倍以上にあたる保険金を受け取れることがわかります。また、60歳時の解約返戻金が53,029.60米ドル、70歳時の解約返戻金が69,516.37米ドルと貯蓄効果があることもわかります。なお、70歳時の解約返戻金が大幅に増えている理由ですが、これは支払いが完了した60歳以降も資金の運用は続けられており、その運用益が解約返戻金に加算されるためです。つまり、終身保険はなるべく寝かせておいた方がお金が増えるといえます。

今後は外貨建ても選択肢に

これまで生命保険における3つの基本型を見てきましたが、はっきり言えることがふたつあります。ひとつは2017年4月の予定利率引き下げによって、貯蓄性のある養老保険や終身保険の利回りが大幅に低下したことです。もうひとつは予定利率引き下げの影響をほとんど受けていない米ドル建ての養老保険や終身保険の貯蓄性はいまだに健在だということです。したがって、生命保険の商品選びにおいては予定利率引き下げの影響をほとんど受けていない定期保険および米ドル建てをはじめとした外貨建ての養老保険や終身保険といったところが有力な選択肢となるでしょう。
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする